2012年04月06日

告白

  教えていいものかどうか、迷う。
  もう春は来ない。
  凍りついた地面の上で照り返す陽の光が強烈なのは、今日が夏至だからだ。
  子どもたちは残念がるだろう。氷原が解ける間もなく秋が訪れると、太陽は分厚い雲の  向こうで黒ずみ、昼間は僅かな薄暗がりの数時間に押し込められ、やがて暗闇に沈む。息を潜めて陽射しを恋焦がれているうちに、春がどんな季節だったのか、想い描くこともなくなった。
  春は、来ない。
  最後の春の訪れからいったい幾つ年を重ねたろうか。数える気力も失せた。
  死にゆく世界の長い末期の溜息は春の思い出と共に消えてゆく。
  子どもたちはもういない。
  私はひとりだ。

 

第112回タイトル競作『告白』投稿作。



posted by 不狼児 at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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