【芸能】
「ひかり寄席」
【ものがたり】
「ひかりぞめき」
(すぎやまあつし)
【ものがたり】
「光ぞめき」
ひかり寄席の地下は人足寄場になっていて、最下層にある二十余りのボイラーに囲まれた三和土では刑務所から送り込まれた囚人が半裸で釜に石炭をくべている。石炭といっても黒くはない。光炭という星型をした桃色の化石で、正体は太古のこの地に棲んでいた植物性の小人らしい。
ひかり寄席の観客は一種の外燃機関であり、舞台を見て、ではなくボイラーで焚かれる蒸気によって爆笑する。
席に着くと気づかぬうちに肛門へ細管を挿入。客なら誰も彼も無差別だ。体内に入った水蒸気はかまびすしい笑いとなって口から飛び出す。光炭で焚いた蒸気でしか、効果はないのだ。
ひかりたんが
わーらった
こー
くすくす
観客は自分が笑っていることを知っているので舞台が面白いものと信じて疑わない。談死も死ん朝もそうやって笑いをとってきた。
光炭が尽きれば、ひかり寄席の笑いは死ぬ。
(不狼児)