2012年02月12日

ひかり町ガイドブック 「カメラ・ノスタルジア」

【一生】
      「ビックバン」
【ものがたり】
      「わ」 
              (根多加良)
            *小冊子『ひかり町ガイドブック』に掲載


【ものがたり】

      「カメラ・ノスタルジア」
  ひかり町で写真を撮るのは困難をきわめる。住人じしんが光となって生きているこの土地では、人の姿も、立ち居ふるまい、風景も、暗すぎるか明るすぎるかで、デジタルカメラもフィルムも役には立たない。住人の放つ光が強烈すぎて受光素子が焼き付いてしまう。幼いものは光が弱いが、闇はハロゲン化銀を感光させない。年寄りは光の向こうで透けている。
  町で唯一つのカメラ屋が増えもせず、潰れもしないのはそのためだ。
  売っているのは旧式の箱型カメラ一機種で、両面を闇で挟んだ特殊な光のサンドウィッチ乾板が使える。レンズの蔽いをとると光の強度に合わせて闇に滲みでる薄明が定着させるのは、対象そのものではない。今はない、かつてそこにあったものの光跡だ。写っているのは幼い頃の自分だったり、先祖だったり、染みのない顔もいる。へえ町並はこんなだったのかと思っても、それはいつの話やら。
  スナップショットは時間をさかのぼり、光の記憶を写し撮る。自由はない。写るものが写るだけ。ひかり町の住人は現在の自分の顔を見ることはない。

                (不狼児)



posted by 不狼児 at 18:15| Comment(0) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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