2012年02月09日

ひかり町ガイドブック 「猟亭かものはし」

【グルメ】 
      「電話食堂」
【ものがたり】
      「旅人のとまり木」 
             (松本楽志)
          *小冊子『ひかり町ガイドブック』に掲載 (ここにも

 

【ものがたり】

      「猟亭かものはし」
  お勧めは」
  鳥料理です」
  砂肝とアバラ肉のテリーヌか。ガクシチョウ?」
  鳥の名前です。姿形が美しいので名高い極楽鳥と比べると、楽士鳥の見かけは地味ですが、とても良い声で啼くので、そう呼ばれています。翼はありますがほとんど飛べません。一時期絶滅が危惧されていましたが、見かけが地味なのが幸いしたのでしょう。相当数の個体が再発見され、今ではとりあえず養殖という名目ではありますが、こうしてご賞味いただけるまでになりました」
  ではそれを」
  ボン! と音を放って炎が上がる。奇術師の皿の上にはすでに料理が。
  これは!」
  煙でも砂でもありません。ごく微細な粒子のように見えますが、楽士鳥の砂肝と胸の挽肉です。じつは楽士鳥の肋骨にはほとんど肉はついていません。薄い羽毛が生えた下に極薄の皮膚が覆っているだけです。だから嘴を開かずとも内部の響きが直接伝わって、ハープが三重奏を鳴らすような、それはそれは澄んだ音色に聞こえるのです」
  食べてしまうんですか」
  美味しいのですよ」
  希少なものを」
  黙っていれば見つかる鳥ではない。とはいえ、飛べないうえに運動神経が極端に鈍い楽士鳥はけっきょく、霞を食って生きるしかありません。霞が餌ですから、砂肝は胸肉に劣らず薄く、幻のように繊細です。挽肉の限界、と当店が自負する逸品でございます」
  軽くて、香ばしくて、舌にのせると蕩けるようなのにしっかりとした味のある、物質感の全くない、純粋な味そのものである料理。
  とある美食家からは「楽士鳥の幻の羽ばたき」と絶賛されたそうな。

             (不狼児)



posted by 不狼児 at 21:56| Comment(0) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。