2012年02月06日

ひかり町ガイドブック 「怪談銀行」

【名所旧跡】
      「光灯寺」
【ものがたり】
      「泳ぐ空」
             (峯岸可弥)
          *小冊子『ひかり町ガイドブック』に掲載(ガイド部分はコメント欄、ものがたり部分はここここにも)


【ものがたり】

      「怪談銀行」
  光妙寺は裏で金貸しを兼業している、と陰口を叩かれたりもするが、扱っているのは銭金ではない。町の住人はもとより、遠くの市町からも大勢来る。自分で体験したり、人づてに聞いた怪異な話を預けに行く。しがらみや祟る恐怖からどうしても話しにくい体験を預けるかわりに、別な話を借りることもできる。ウズウズと心が落ち着かず、黙っていられなくなった時には、かわりにそれを話せばいい。質屋じゃないので売り買いはしない。長く預けた話には銀行と同じで利息がついて戻ってくる。満期というものはない。寺が存在し続ける限り、貸し出され、返済され、使い回される話は語る人や時と場所の違いで姿形を変え、利子が利子を呼んで肥え太り、時には話に失敗して雲散霧消し、消えた話はまたどこからか現れて、残った断片が預けられ、再結合して育ってゆく。
  借りた話には利子をつけて返済する。利子が何かは誰も言わない。口にするのも憚られることだ。
  時にはネタに詰まった怪談師が姿を見せることもある。巡礼者を気取ったような貧相な身なりで、使い回されてすり切れた話やほつれてこぼれた裏話、真贋も定かではない骨董話、毛の生えた無駄話、黴びた嘘などを大量に、低利で借りては、頭陀袋に詰めて背負ってゆく。
  帰ってゆく後ろ姿は曇り空に溶けるカモメのように真っ白い。

            (不狼児)



posted by 不狼児 at 22:46| Comment(2) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
【名所旧跡】
「光灯寺」
 ひかり町唯一の寺院が光灯寺である。こぢんまりとした古い禅寺であり、かつては修学院離宮や天龍寺にも匹敵すると謳われた借景も土地開発により現在はその景観を保ってはいない。しかし手入れの行き届いた端正な枯山水の美しさは参拝客の胸に深く沁み入る。
 茶室もあり抹茶と落雁を味わう事も出来る(有料)。静かにくつろいでいると、住職がひかり町や光灯寺の歴史を訥々と話してくれる。かつて空から大量の魚が降ったと言い伝えられているという。
Posted by 峯岸 at 2012年02月08日 23:20
おお、ありがとうございます。
皆んなも公開してくれるといいのに。
冊子持ってる人限定ではないので、ひかり町にはもっと増殖してほしい。

ちなみに光妙寺は、光灯寺の電柱の横の裏門にわざと間違えたようなかすれた文字の看板がかかっている感じです。
Posted by 不狼児 at 2012年02月09日 20:14
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