【おみやげ】
「ハレさん水・ガネさん水」
【ものがたり】
「あまからブギウギ」
(穂坂コウジ)
*小冊子『ひかり町ガイドブック』に掲載(ここにも)
【住まい】
「枯山水と鋼の家」
災害や犯罪、経済恐慌から逃れ、安全に暮らしたいからと、ひかり町に移り住む人もいます。
「枯山水の家」 はどんな洪水や大津波に襲われても一瞬ですべての水を干上がらせてしまう家。「鋼の家」は地震や火山はおろか隕石の落下にも耐えられる。ただしどちらもミニチュアで、実際に人は住めません。
「ガレバモドキ」という囮の家はやはりミニチュアですが、起こった災難をひきつけると、身代わりになって果てしなく砕け続けるという話です。
どこに住もうと同じことですね。
ひかり町はそれがわかる町です。
【ものがたり】
「引越し症候群」
彼は足の裏に奈落を持っていた。同じ所に立っていると足元に徐々に奈落が開いて、落とし穴のように落ちてしまう。だから彼はひとつ所に長く住んでいられなかった。
ある日、転入届を済ませた役場の前で死の商人と出会った。死の商人は字義通り死の商人で、彼に死を買わないかと持ちかけた。
おいくらで?
あなたの命とひきかえに。なにご安心ください。今すぐ死ぬわけではありません。あなたが死ぬ時が来れば、死が有効になるだけです。それまでは今までどおり、あなたは命のかわりに、死を生きるのです。
死はどんな生き心地なのでしょう。思えば数々の身の不運は生きていることの証でした(まだ生きていると証明してみせるために、何度となく、這い上がったのかもしれない)。
同じですよ。生と死は表裏。不運も幸運も訪れるのは否応ない。しかし死は時と場所を無効化します。そうですね。以後決して、あなたの足元に奈落が開くことはありますまい。
(不狼児)