2011年05月14日

法螺と君との間には

「同情するなら金をくれ」とさも被災地から来ましたという体で訴える少女。多数。銀座にも。公募文学賞偽装でボロ儲けした出版社の前にも。どうやら女装した少年もいるらしい。僕はユニセフの嘘つき大使になる。「子供たちを救う」と言って集めた金で夜遊びするんだ。社員の洗脳と宣伝工作に金をつぎ込んで原発の安全対策をなおざりにした東京電力の正体をずっと前から知っていた、と彼は言い張る。僕たちはこの世界に生まれる前から殺されていたんだ。あいつらが金を儲けるために。
 少年は三界に家なき老人と野良犬と水子のブルースを歌う。
「神さまはいるよ。だから大丈夫。ぜったい」と言って少女は笑い、安達ヶ原の鬼婆のようにキラリと光る刃を研ぐ。
 ホラ法螺ホラーここにもいるよ。手つなぎ詐欺の一党が。皇居前にも。渋谷にも。「日本は凄い。日本人は素晴らしい。一人ではできないことでも皆んなが力を合わせれば、なんでもできる」
 人の心につけこむような愁嘆場。ビデオ・イン・ア・ヘルも大安売りだ。
 新宿御苑で。希望の空に触覚を伸ばし、無数のそれらを絡みあわせて、ナメクジ星人は涙の雨にぬれ溶ける。涙の海にとけあって、我等一つになれるはず。
「さあさ、タダ働きしようよ」
 笑って暮らしていけるなら、僕はもっとバカになる。

続きを読む


posted by 不狼児 at 23:05| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする