2013年05月25日

著者紹介の下書き

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不狼児(ふろうじ)
主に短い小説を書く。

「第4回ビーケーワン怪談大賞」では『猫である』が佳作、『マンゴープリン・オルタナティヴ』が愉しませてもらいました賞を受賞。

後にいくつかの作品がアンソロジーに収録された。
『てのひら怪談』(ポプラ社)シリーズ。
『リトル・リトル・クトゥルー―史上最小の神話小説集』(学研)
『超短編の世界』(創英社)シリーズ。
『みちのく怪談コンテスト傑作選2010』(荒蝦夷)


ほんとうは、ここで「同期受賞者には『生き屏風』で第15回日本ホラー小説大賞短編賞受賞の田辺青蛙と「夜は一緒に散歩しよ」で第一回『幽』怪談文学賞長編部門大賞受賞の黒史郎と「さざなみの国」で第23回日本ファンタジーノベル大賞を受賞した勝山海百合がいる」と自慢したいところだけど残念。
生涯唯一の賞歴である怪談大賞を外すわけにはいかないが、私と同類だと思われては迷惑がかかりそうだから、なるべく他の人の名前は出さないようにしないと。
超短編とか怪談も同じ理由でなるべく使用しないようにする。
収録された本が紹介してあるから無駄だ、と言われればそれまでだけども。

以下は省略だろうな。

死んだ人間と過去のものが好き。現在と未来は嫌い。ポップなものは大嫌い。耽美は苦手。ホラーは性に合わない。エロ・グロ・ナンセンスの中ではナンセンスが一番。エロとグロに関してはおつきあい程度。人生を語る小説が最も忌まわしいと思う。渋くて地味な作風が好みだが、自分で書くのは支離滅裂なものだけ。日本の伝統芸能は全く理解できない。
嫌いな言葉はアート、アーティスト、愛国心、もちもち(もっちり)した食感、シャキシャキとした歯ごたえ、など。
お薦めの作家はデビッド・グーディス、李賀、山崎俊夫。読むと幸せになれる。

posted by 不狼児 at 18:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月23日

お知らせ

何にも書けなくなっちゃったんで、電子書籍(kindle)を出してみました。

ラインナップはここから→ (有)煙草屋

どんなもんでしょう?

posted by 不狼児 at 17:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月04日

ひかり町ガイドブック − ルール試案、お願いなど

1.架空の町。地誌は確定していない。名称はひかり町。

2.ひかり町の【名所旧跡】【自然】【祭り】【あそぶ】【さわぐ】【絶景】スポットなどを紹介するガイドを書く。

3.ガイドに記された場所や物事にまつわる物語を書く。 
  詳しくは「日記アメンチア」(タカスギシンタロ)のここここを見られたし。サンプル作品もあってわかりやすい。

4.他人の書いたガイド部分に、自由に物語を繋げる。物語からガイドを派生させるのも、ガイド部分のみ書いて、誰かが続けて物語を書いてくれるのを待つのも有り。
  どうせガイドは互いに矛盾している。必ずしも忠実に設定を踏まえる必要はない。
  わざと間違えて続けたり、誤植をまじえ、用語を変え、物語からガイド、また物語へと横断し、偏移を重ね、パラレルワールドを跳躍して、全宇宙に偏在するひかり町を拾ってゆけば、――そう、どのように言えばいいのだろう。これはつまり、なんとなく何とかなりそうな気がするだけの一種のアンチ・アンソロジーであり、決して作品を選ばない。ただ複数の作者によって書かれることが重要なのであり、話の巧拙、レベルの高低とか、出来の良し悪し、ジャンルの如何など、参加する意志以外のものを問わない。

5.掲載分については伏せておくのが礼儀かなとは思ったが、冊子の方はレイアウトや挿絵も付いてひとまとまりの別物だし、ミステリじゃないんだから、ネタバレでつまらなくなるようなものでもないと判断した。
  わざと公開しない手もあるだろう。隠し札と言うか、掲載作を歯抜けにしておいて、勝手につなげた作品群と公開されたボツ作から想像させるなど。
  やり方は色いろある。単純な方法がいいとは限らない。
  でも人生は短い。取り急ぎ、はじめることが肝心だ。
  ひかり町がひしめく無数の物語で膨れ上がり銀河のように渦巻く姿を見ずに死にたくない。 
  ――結果が、棟割長屋程度にしかならなくても、それは一向にかまわないのだ。

6.以上は「ひかり町ガイドブック」作品募集企画を延長したものですが、主催者および作者各位には許可をとっておりません。
  すべて事後承諾となります。
  ひとたび発せられた言葉は公共のもの(まして私信でもつぶやきでも密室の談合でもない、作品です。作品は作者だけに属するものではないと考えます)、一方的に思いをぶつけたり、怖がらせたり、苦しめたり、楽しませたり、悲しませたり、和ませたり、傷つけたり、惑わせるだけでなく、言葉は対話するためにある、と考えるからです。相手の反応を限定するのは対話とは言えないでしょう。(←どう? なかなかカッコいいでしょ。目一杯気取っちゃったんで恥ずかしいったらないが) 感想を述べたり批評するかわりに、物語で対話すると考えてもらえればよろしいでしょう。物語が物語の谺を返す。返ってきた谺がまた新たな場所を見つけ出す。谺に妖精が異なる声をかぶせるように、声に声が重なって、囀りもせせらぎも咆哮も巻き込んで、森と谷と山のあわいに複数の声が響くのを聞けば、少しばかり幸せな気分になれるかもしれません。
  各作品の著作権はあくまでその作者にあり、設定や登場する事物を流用したとしても「名のある作品とその二次創作」のごとき従属する関係ではなく、あくまで対等に、並列的に、独立して存在することをここに認め、それぞれの作品並びに作者を傷つける意図がないことを宣言する次第です。
  もし勝手に繋げられては迷惑だ、一緒くたにされるのは嫌だ、という作者の方はお知らせ頂ければリンクを外します。

7.不狼児がここに公開した作品については自由につなげて頂いてかまいません。

8.お知らせくださればリンクを張ります。

9.どうせ否定するなら新たなものがたりを書き加えて否定してくれると嬉しい。

10.あと、何かあったっけ。

そうだ。以下に「ひかり町ガイドブック」の投稿作没作新作含め当方が見つけたものを勝手にリンク。

     タカスギさんち       
     空虹さんち       
     オギさんち                                             
     砂場さんち            
     脳内亭さんち
     いさやさんち   
     氷砂糖さんち     
     りきさんち   
     はやかつさんち   

 

posted by 不狼児 at 17:25| Comment(3) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年05月06日

ひかり町ガイドブック・別冊グルメ特集 「予告編」

  人間は食べ物によって規定される。
  ひかり町で食べられる物はひかり町の根幹を形造る。
  明治以降の日本の歴史は食事の肉化の影響抜きには考えられない。また昭和半ば始まったインスタント食品の時代が、その後の社会生活をどのように変えたかは皆さんがご承知のとおりだ。
  人間は自らが発明した食べ物によって人間になる。社会変革はそこから始まる。戦争もまた。
  何を食べているかが重要なのだ。豚肉を食べないイスラム教徒と豚肉を食べるキリスト教徒の争いは言わずもがな。両者の間に融和はない。血を抜いた肉を食べ乳と混ぜないユダヤ教徒が割って入っても争いは激化するだけだ。クジラもイルカも食べないアメリカ人はどちらも食べる日本人を決して許さないだろう。
  人は生活を変えようとする時、食べる物を変える。種種雑多、ありきたりなものから奇怪なものまで。ひかり町の美食の歴史は人間の変革可能性を示す格好の見本である。

posted by 不狼児 at 16:10| Comment(0) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月11日

夜の森線 (リミックス)

「ほら。ここが僕のふるさとだ」
  彼は錆びた消火栓の裏のゴミの溜まった路肩を指して言った。
  雑居ビルの陰になった日も差さない路地の突き当り。湿ったコンクリートは黒ずんで、罅割れたモルタルのかけらも落ちていた。土埃にはガラスの粉も混じっている。
  成人式の一週間後、彼は私にふるさとを案内すると言った。
  ここがそうか。
  振り向くと高圧線の鉄塔が見える。
「母は僕を産んですぐに、あそこで首を吊ったんだ」
  近くに駅の変電所があるのだ。鉄塔は町外れから田んぼの中、道路ををはさみ、山肌を登り、延々と線を引いて連なっている。
「高圧線は母のふるさとまで続いている」
  二十年。過ぎたのだ。街は廃墟のように静かで人の気配もない。
  駅には塵が積もっている。

 

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posted by 不狼児 at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

父の日

  幼い頃、僕は亀を飼っていた。
  父は亀の甲羅を叩き割ったその手で僕の頭を優しく撫でた。

  学校が早く退けた午後。
  家に帰ると、五年前に死んだ祖母の布団を包丁で何度も刺している母の姿を見た。

  母は赤ん坊を刻みキャベツで洗ったこともある。キャベツの上にいる赤ちゃんを姉が見つけて、何をしてるのか訊ねたら、洗っているのと答えたそうだ。あれはどこの子だったんだろうね、と姉は呟く。

  僕が生まれた家は父が育った家で、柱には背の高さを測ったのではない傷が無数についている。
  作文にそう書いたら、父にひどく怒られたのを思い出した。

  春休み。姉が物置で首を吊った。
  夕方、見たことのない女の人が腹の下に大事そうに何かを抱えて、家から出ていった。

  母が病院で亡くなったのは先月のこと。

  昨日。僕は死んだ。
  両足が釘で道路に打ち付けられていることも知らず逃げることも出来ないまま車に轢かれたのだ。

  今日は父の誕生日だ。
  おめでとう。

 

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posted by 不狼児 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

dogs (リミックス)

  足踏みをする。足踏みをする。囚人は寒い。
  一列に並んで、まだ進んではいけない。
  九官鳥の看守長が禿の刑務所長のかつらの上から号令をかける。―Go down, dogs!
  丸坊主の囚人を収めた四角坊主の刑務所には抜け穴の掘れない四角四面の庭がある。
  凍えた声が号令を復唱しながら円を描く。進んでも戻ってくるので足踏みと変わらない。
  犬どもよ。犬を呼吸して犬になれ。もっと。

 

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posted by 不狼児 at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月10日

目石

  目石を拾ったので、手に目移りした。
  石を割ると中からギョロ眼がこっちを見ていたから、慌てて取り落したが、遅かった。瑪瑙の中の眼玉は俺の掌に乗り移り、好奇心を存分に満たすまで、離れない。
  三日は過ぎ、十日経っても目は俺の掌で見続けた。

 

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posted by 不狼児 at 22:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月06日

告白

  教えていいものかどうか、迷う。
  もう春は来ない。
  凍りついた地面の上で照り返す陽の光が強烈なのは、今日が夏至だからだ。
  子どもたちは残念がるだろう。氷原が解ける間もなく秋が訪れると、太陽は分厚い雲の  向こうで黒ずみ、昼間は僅かな薄暗がりの数時間に押し込められ、やがて暗闇に沈む。息を潜めて陽射しを恋焦がれているうちに、春がどんな季節だったのか、想い描くこともなくなった。
  春は、来ない。
  最後の春の訪れからいったい幾つ年を重ねたろうか。数える気力も失せた。
  死にゆく世界の長い末期の溜息は春の思い出と共に消えてゆく。
  子どもたちはもういない。
  私はひとりだ。

 

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posted by 不狼児 at 22:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 500文字の心臓 超短編 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月02日

ひかり町ガイドブック 「濡れた指の女」

【パワースポット】

      「再生塚」
  再生塚には高さが人の背丈ほどの暗青色をした自然石が立っている。仄かに光を放つところから以前は殺生石とまちがわれていたが、実は再生効果がある。誰のだかわからない拾い物をかざすと、持ち主の姿が鮮やかに浮かびあがる。駅員は毎日のように集めた忘れ物を自転車の荷台に乗せて現れては、持ち物と浮かんだ主人の映像を写真に収めて戻ってゆく。故人の持ち物でも生前の姿がもれなく浮かぶので、それを目的に訪れる人も多い。


【ものがたり】

      「濡れた指の女」
  指を拾った。女の指だ。爪はきれいに剥がれてしまっていたが細く、しなやかで、死んで紫色になっているのに柔らかい。たぶん薬指だろう。うっすらと指輪の跡が残っている。
  再生塚に行って石にかざしてみたが、生前の姿は浮かばなかった。
  肌身離さず持ち歩いていると、切断面から肉の芽が生えてきた。
  芽は順調に育ってこぶし大に膨れ、紫がかった肉の球体から突きだした肌色の指先を触ると、びくびく動いた。
  やがて持ち歩けないほどに成長した肉塊は徐々に形を変えてゆき、胎児のように丸まった女の形になった。女は目をつぶり、体を縮めたまま、薬指を曲げ伸ばしして、わたしを求めた。まぶたの下に透ける眼球がくるくると回転して、夢を見ているとはっきりわかる。なかば開けた唇から覗く歯がわたしの指を噛もうとする。
  女の体がつやつやとした血色を取り戻し、少しずつ髪の毛が乾いて、皮膚呼吸に汗の発散が甘酸っぱく漂うようになった頃、目を開けて、女はもういちどこの世に誕生する。
  鼻腔を広げ、唇をすぼめ、一気に息を吐き出すと、女はわたしの妻だと主張した。
  涙はとめどなくあふれて川になり、思い出を水に流した。

              (不狼児)

posted by 不狼児 at 21:55| Comment(0) | TrackBack(0) | ひかり町ガイドブック | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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